家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
セドリックは私の手をしっかりと握ると、毅然とした声で言った。

「帰るぞ、クラリス。」

その一言で私も立ち上がろうとした時だった。

「待ってくれ、グレイバーン伯爵!」

お父様の声が、焦り混じりに響いた。

セドリックは足を止め、ゆっくりと振り返る。

「お父上。引き続き、生活費の援助はいたします。」

「えっ……生活費だけ?」

「はい。それ以上のこと――たとえば、それを盾にしてクラリスとの離婚を強いるようなことがあるなら、すぐにすべて打ち切ります。」

「いや、それは……違う……」

お父様の声がしぼんだ。

そしてセドリックは、ルシアに鋭い視線を向ける。

「その代わりに、ルシア嬢をきちんと教育し直してください。人として、家名を背負う者として、必要な礼儀と誠意を。」

ルシアは唇を噛んだまま何も言えなかった。

「それが、私からの最後の条件です。」

セドリックはそう言い残すと、私の手を引いて応接室を後にした。
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