家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
そして、カザリス伯爵の屋敷の近くで結婚式は執り行われた。

場所は、丘の上に佇むこぢんまりとした白い教会。

広くはないが、木の香りが心地よく、静謐で温かな空間だった。

「はあ……豪華なウェディングドレスを着るのが、夢だったのに……」

式の直前、花嫁控え室でため息をついたのはルシアだった。

白いが飾り気のないドレスに、彼女は何度も鏡を睨むように見つめていた。

「結婚できただけでも、感謝すべきでしょう?」

私がそう言うと、ルシアは不満そうに顔をしかめた。

けれど、もう以前のように噛みついてくる勢いはない。

教会の椅子に座る私は、列席者の静けさに耳を澄ませながら、つい小さくため息をつく。

――家族として出席していることすら、奇跡かもしれない。

そう思えば、この日が迎えられただけで十分だと、自分に言い聞かせた。
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