家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「こちらが、娘のクラリスです。」

母の言葉に、ようやくセドリックの視線が私に向けられた。

「……はじめまして、クラリス嬢。」

形式的な挨拶に、私は作り笑顔を浮かべるのが精一杯だった。

彼の目には、私はどう映っているのだろう。

「グレイバーン伯爵。はじめまして。」

ようやくの思いで声をかけたけれど、私は彼の顔をまともに見ることができなかった。

下を向いたままの挨拶に、きっと『暗い女だ』と思われたに違いない。

案の定、伯爵はそれ以上何も言わず、会話も弾まなかった。

沈黙が重くのしかかる中、父が空気を読んで口を開いた。

「グレイバーン伯爵。今日はどれくらい時間を取れる?」

「夕食など楽しむ時間なら、あります。」

伯爵はあくまで冷静で、抑揚のない声だった。
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