家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「そうか。よかった。」

父は安堵したように笑い、まるで旧知の友人であるかのように、伯爵に肩を寄せた。

初対面とは思えないほど、気さくな素振りで言葉を重ねていく。

――私よりも、父の方が彼と親しげで、言葉を交わしているなんて。

何とも言えない疎外感が胸に広がった。

婚約者として紹介されたはずの私は、そこに居ても居なくても変わらないような存在だった。

ただ、彼の冷たい瞳の奥に――何かを隠しているような気配を、ほんの一瞬、感じた。

それが何なのかは、この時の私には、分からなかった。
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