家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
私は静かに席を立ち、誓約の場に立つ妹のもとへと歩み寄った。ざわつく会場の中、私の声だけがはっきりと響いた。

「観念しなさい、ルシア。」

その言葉にルシアは肩を震わせ、口を開きかけては閉じ――そしてようやく、小さな声で呟いた。

「……誓います。」

どうにか式は成立した。だが、参列者たちの表情はどこか冷ややかだった。

ああ、これからこの二人の結婚生活はどうなるのかしら。

少なくとも、愛や思いやりから始まるような穏やかな日々ではないだろう。

それでも、今日からルシアは正式にカザリス伯爵夫人だ。

彼女にとって、それが希望の始まりとなるのか、さらなる試練の始まりとなるのかは……彼女次第だった。
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