家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「では夕食まで、クラリスとお話でも。」

父の唐突な言葉に、私は思わず声を上げた。

「えっ⁉」

驚く私に、父はそっと耳打ちしてくる。

「上手くやるんだぞ。」

上手くって、何をどう話せばいいというの――?

緊張で喉が渇くのを感じながら、私は伯爵の方へ向き直る。

「あのー……」

恐る恐る話しかけると、グレイバーン伯爵――セドリックは無言で立ち上がり、近くの椅子を私のために引いてくれた。

「どうぞ。」

低く落ち着いた声。その響きに、一瞬だけ胸がざわめいた。

私が戸惑いながらも腰を下ろすと、彼も向かいの椅子に静かに座る。

……沈黙が、痛いほど長く感じられる。

そばかすを見られているのではないか、暗い女だと思われているのではないか――
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