家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「じゃあ、お母さん。来月また来ますね。」

助産婦さんと医者は、にこやかにそう言って馬車に乗り込んでいった。

私は玄関先で彼らを見送り、ゆっくりと屋敷に戻る。

「セドリック!」

私が名を呼ぶと、彼はすぐに振り向き、駆け寄ってきた。

「クラリス……!」

私達は、その場でしっかりと抱きしめ合った。

ぬくもりが、胸の奥まで染み込んでくる。

「赤ちゃん、私達の元へ来てくれたのね……」

感動で震える声が、自然とこぼれる。

「……素晴らしい日だよ。君と、僕の子供だ。」

セドリックの瞳には涙が浮かんでいた。

「ありがとう、クラリス。命を……ありがとう。」

「私の方こそ……あなたと家族を築けるなんて、夢みたい。」

私達は、希望に満ちた未来に向かって、そっと微笑み合った。

この日、家族という言葉が、私達にとって新しい意味を持ち始めた。
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