家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
そんな不安ばかりが頭をよぎって、うまく言葉が出てこない。

けれど彼は、まるでそんな私の内心など見透かしたかのように、ふと優しく目元を緩めた。

「緊張していますか?」

たったそれだけの問いかけなのに、私は目を見張った。

彼が、私の心を気遣ってくれたように思えたからだ。

「少しだけ。」

そう答えるのが精一杯だった。

彼の瞳が、まっすぐに私を射抜くように見つめてくる。逃げ場などないと感じるほどに。

「僕のことは、何か聞いていますか?」

その声は、驚くほど穏やかだった。

低く柔らかい声質に、私は少しだけ緊張をほどかれる。

「……とても、ハンサムな方だとお聞きしました。」

「ハンサムねえ。」

セドリックは口元を緩めて、クスクスと小さく笑った。
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