家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
表情一つ変えなかったけれど、あの瞳の奥に宿っていた想いを、私は見逃さなかった。

――彼女なら、伯爵夫人の座を狙うことはない。

誇り高く、忠義に厚い人だから。

でも、それでも……やっぱり私は、辛かった。

セドリックの肌に触れるその手が、もし自分ではなく、キャリーのものだったら。

その事実が現実になったら、私は――耐えられるだろうか。

「馬鹿ね、私……」

涙が一粒、頬を伝った。

割り切ったつもりだった。

貴族の妻として、冷静に、理性的に……そう生きていく覚悟だった。

けれど私は、ただ一人の夫を、誰にも渡したくない、ただの女だった。

「キャリーはまだ独身だよ。」

セドリックがそう答えた時、私は少しほっとしたような、複雑な気持ちになった。

いっそ、誰かと幸せになってくれていればよかったのに――。
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