家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「あなたに、彼の相手をお願いできないかと思って。」

店内の花の香りが、急に遠のいていくような気がした。

キャリーは何も言わず、ただ黙って私を見つめていた――その沈黙が、私の胸を締めつけた。

「愛人になれということですか。」

キャリーの言葉は静かだったが、その瞳には揺るぎない拒絶の色が浮かんでいた。

「……そうね。」

私は目を逸らさずに答えた。

覚悟を持って来たつもりだった。

でも、どこかで彼女の答えを恐れていた。

しかしキャリーは小さく息を吐き、あきれたように微笑んだ。

「セドリックのあなたへの愛情は、巷でも有名なほどです。私の出る幕ではありません。」

私は思わず、キャリーの腕を掴んでいた。

「……修道女になりたいんですって?」

彼女は一瞬だけ驚いたようにまばたきをしてから、目を伏せた。

「ええ。神の元で静かに生きるのが、いちばんいいと思ったから。」
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