家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「それは、セドリックへの気持ちを捨てるため?」

その問いに、キャリーはわずかに肩を震わせた。

「忘れられない人がいるのは、苦しいんです。だから、神様に全て預けるしかない。」

「だったら、その想いをセドリックに預けて。」

私の言葉に、キャリーは一瞬まばたきもしなかった。

ただじっと私を見つめるだけで、何も言わない。

「あなたの気持ちを、私も知ってるわ。けれど、彼は私の夫になった。だからこそ、私の知る範囲で、彼を支えてほしいの。」

キャリーの瞳が揺れた。私は彼女の腕にそっと触れた。

「いつでもいいわ。心の準備ができたら、屋敷に来てちょうだい。」

キャリーは何も答えず、ただ静かに頷いた。

その表情は、悲しみと決意が入り混じっていた。

私たちはそれきり、言葉を交わすことなく別れた。

けれど、私は確信していた。彼女は来る、と。

そして——

キャリーがグレイバーン伯爵家を訪れたのは、それから一週間後のことだった。
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