家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
キャリーはまっすぐにセドリックの胸に近づき、彼の胸元にそっと額を預けた。

「……君が僕を愛しているのは分かった。」

セドリックはその肩に手を添え、そっと抱きしめた。

キャリーはその腕の中で涙を流しながら、しがみついた。

「ああ、セドリック……」

一瞬、部屋に静けさが落ちた。

だが次の瞬間、セドリックは静かにキャリーの身体を離した。

「でもキャリー。僕にはクラリスしかいないんだ。」

その言葉に、キャリーの目から新たな涙がこぼれ落ちた。

「ごめんね、期待させてしまって。」

セドリックの声は、やさしさと決意に満ちていた。

そしてキャリーはそのまま、部屋から出ようとドアノブに手をかけた。

扉が静かに開かれ、廊下に立っていた私は、思わず目を見開いた。

彼女と目が合う。

「キャリー……」

声をかけると、彼女はかすかに首を横に振った。

「ごめんなさい。お役に立てなくて。」
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