家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
掠れた声と共に、キャリーは私の脇をすり抜けるようにして去って行った。

後ろ姿が、どこか悔しそうで、切なかった。

「クラリス。どういう事だ。」

部屋の中からセドリックの声が響く。少し怒ったような、困惑したような声だった。

私はゆっくりと部屋に入った。

「彼女があなたを想っている事は知っていた。でも……夜の相手が必要なら、せめて信頼できる人がいいと思ったの。」

セドリックは腕を組み、私を見つめた。

「僕を疑うのか。」

セドリックの低い声が、静かな部屋に響いた。

「いいえ、疑ってるわけじゃ……ただ、男性には……夜の相手が必要だって……」

言いかけた瞬間、セドリックが突然、後ろの壁を拳で叩いた。

鈍い音が部屋を震わせる。

「誰に何を吹き込まれたんだ!」

その声には、明らかな怒気が含まれていた。

あの優しいセドリックが、こんなに怒るなんて。
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