家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「僕は愛人なんて作らない。たとえどんな理由があっても、君以外の女に触れる気はない!」

彼の言葉に、私はただ立ち尽くすしかなかった。

心配していたつもりだった。

でも、それは彼の誠実さを否定する行為でもあったのだ。

「セドリック……」

私の呼びかけも虚しく、彼は踵を返し、ドアを乱暴に開けるとそのまま出て行ってしまった。

重く閉じられたドアの音が、私の胸の奥に響いた。

夕食の席。ナイフとフォークの音だけが静かに響いていた。

セドリックは、一言も話さなかった。

視線も合わせてくれない。

「まあ、あなた達が話さないなんて珍しいわね。喧嘩でもしたの?」

通りかかったお母様が、軽口のように言った。

「ええ、まあ……」

私がそう答えると、お母様は肩をすくめて去っていった。

食事が終わっても、セドリックは静かなままだった。

意を決して、私は彼に声をかけた。

「……ごめんなさい、セドリック。あなたの愛を、試すようなことをして。」
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