家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「せめてレオンが愛人を連れて来なかったら……」

そうつぶやいたルシアの目が、決意に染まった。

次の瞬間、彼女はくるりと向きを変え、真っ直ぐにレオンのいる方へと歩き出した。

「ちょっと、ルシア!」

私は咄嗟に呼び止めたが、彼女の足取りは止まらない。

何をするつもりなの? 

私はお腹を押さえながら、彼女の後を追った。

「お待ちなさい、ルシア。今行っても、あなたが恥をかくだけよ!」

それでもルシアは振り返らない。

会場の視線がすでに彼女へと集まりつつあるのに、彼女はまったく意に介していない様子だった。

「今、行かないでいつ行くの!」

その声は怒りと悲しみに満ちていて、彼女が周りの状況をまるで見ていないことが分かった。

まるで自分の心をぶつけずにはいられないかのように――。

私は不安とともに、ルシアの背中を見つめ続けた。
< 250 / 300 >

この作品をシェア

pagetop