家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
ずんずんと迷いなく進むルシア。

その勢いに会場の空気がざわめき始めた。

レオンがようやく彼女に気づいたのは、ほんの数歩手前だった。

「ルシア……」

レオンは慌てて立ち上がり、隣にいた女性――愛人の前に立とうとした。

だが、その一瞬の隙をルシアは逃さなかった。

彼女はまっすぐその女の元へ歩み寄り、迷いなく、その頬を平手で打った。

パチン、と乾いた音が響く。

「セレンシア!」

レオンが叫び、すぐさまその女をかばった。

だが、ルシアはその場に立ち尽くす。怒りというより、今は――混乱しているようだった。

「セレンシア……?」

その名を、彼女はもう一度繰り返した。

どこかで聞いたことがある。
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