家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「これが……本当の、貴族階級なのね。」

ルシアは呟いた。

セドリックが伯爵として広く尊敬されているから、グレイバーン伯爵家の夫人として今の立場がある。

それは分かっていた。けれど――本来の自分は、ただの公爵家の娘。

いや、今ではその肩書きさえ“過去のもの”だった。

「クラリス、気にしているの?」声をかけてきたのはリリアンだった。

私はそっと彼女を見つめた。

「まあ、公爵令嬢に気安く話しかけたルシアは、そう言われて当然よね。」リリアンの言葉は、どこか冷ややかだった。

胸の奥に、小さな棘が刺さる。

「だけどそれは、ルシアの日頃の態度のせいよ。」

リリアンはあくまで冷静だった。

淡々と、そしてはっきりと。

庇うわけでもなく、ただ事実を言っているような口調で。

私は気づいた。貴族社会では、“過去の栄光”より、“現在の振る舞い”こそがものを言うのだと。
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