家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「いえ。気にしていません。」

そう言って、私はそっと視線を落とした。

気にしていない――そのはずだった。

何度も言い聞かせてきた。

鏡の中の顔を見つめながら、これは私の一部なのだと。

けれど、「どうでもいい」という彼の一言に、私の中で何かがひび割れた。

私を娶るのは、私自身ではなく、エルバリー家の娘だから。

家柄のため。政略のため。ただそれだけ。

彼の瞳には嘘がなかった。だからこそ、その無関心が、かえって重く胸にのしかかる。

「君が気にしていないなら、それでいい。」

セドリック伯爵の声は変わらず穏やかだった。

私の感情の揺れなど、まるで気づいていないように。

私は自分の膝の上で手を握りしめた。
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