家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「あーあ。お父様も来ればよかったのに。」

私がそう呟くと、母の手がぴくりと止まった。

何かを考えるように、目を伏せている。

「お父様の事だから、産んでから孫を連れて来いって言ってそうね。」

冗談のつもりで言ったのに、母は私をじーっと見つめてきた。

「えっ?」私、何かまずいこと言った?

「クラリス。私とお父様が――離婚したら、あなたはどちらにつく?」

「……離婚⁉」

突然の言葉に、私は椅子から落ちそうになった。

まさか、こんな話をされるなんて。

「ちょ、ちょっと待って。お父様と、何かあったの?」

「ずっと我慢してきたの。でも、あなたが幸せそうな顔を見たら……もう、私も我慢しなくていいんじゃないかって思って。」

母の瞳には、どこか吹っ切れたような決意が宿っていた。

「そんな、大事な話……」

私は動揺を隠せなかった。

自分の親が、離婚を考えていたなんて。

だけど、母の目は真剣だった。

冗談ではない。本気の話なのだと、私にもわかった。
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