家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「ほとんど、名声だけで生きているような人だわ。でも、ルシアの一件であてにしていた収入も途切れて。」

母の言葉に、私は何も言えなかった。エルバリー家の名に頼っていたのは知っていたけれど、そこまでだったなんて。

「それなのに、それなのに!」

母の声がわずかに震えた。感情を抑えきれないその姿に、私は戸惑う。

けれど、その激しさにどこか既視感があった。――そうだ、ルシア。あの子の癇癪のような怒り方は、母譲りだったのかもしれない。

「……あの人、愛人を囲っていたのよ!」

「えっ⁉」

思わず声が裏返った。にわかには信じられなかった。

「お父様が……愛人を?」

「そうよ。しかも家の金を使ってね。高価な宝石や服、馬車まで与えて……私には節約しろと言っておきながら!」

母の顔には、怒りと悔しさ、そして長年抑えてきた哀しみがにじんでいた。

私は言葉を失った。

父が、そんなことを……。

でも、母の様子は嘘ではない。

「だから、もう限界なのよ。私は、あの家を出るつもり。」

母の決意は、いつになく強かった。
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