家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「だからクラリス、もしこの屋敷に空きがあるのなら、私を住まわせてくれないかしら。」

「ええ?」

思わず聞き返してしまった。確かにこの広い屋敷には、十分に部屋の余裕がある。

けれど、ここはグレイバーン家の屋敷。

セドリックと私と、これから生まれてくる子供の家族の場所だ。

「……実家はダメなの?」

少し言いにくそうに尋ねると、母は小さくため息をついた。

「私の実家?とっくにないわよ。」

「えっ?」

驚いた。母の実家は、確か由緒ある公爵家だったはずだ。

祖父母も健在だと聞いていた。

「一族は没落したのよ。長男が放蕩を尽くして、借金まみれにしてね。今は屋敷も売られて、跡取りもいないわ。私は結婚して姓が変わってたから、相続からも外されてるの。」

そう言って母は肩を落とした。

気丈で凛としていた母の、こんなに弱った姿を見るのは初めてだった。

「……じゃあ、どこにも行く場所が……?

私は、迷っていた。でも――セドリックはどう思うだろうか?
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