家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「ねえ、お願いよ。クラリス。」

母は必死だった。私の手を握りしめ、離さない。

「いや、落ち着いて……」

「あなたを産んだのは、私よ。恩返ししてよ。」

「そう言われても……」

心がざわつく。私だって母を見捨てたいわけじゃない。でも、突然すぎる。そしてこの屋敷は、私だけのものではない。

その時、扉が静かに開いた。

「やれやれ、またクラリスを困らせているのですか?」

セドリックだった。いつの間に戻って来ていたのだろう。彼は私の隣に座り、そっと肩に手を添えてくれる。

「あら、セドリック。公爵への昇進おめでとう。」

母は態度を変えたようににこやかに祝辞を述べた。

「ありがとうございます。」

セドリックは穏やかに微笑んだが、その奥に厳しさがあった。

私を守ろうとする眼差し。私は彼の横顔を見て、胸が少し熱くなった。
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