家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
そして一週間後、今度は父が一人でこの屋敷にやってきた。

「お父様⁉」

玄関先で出迎えた私は、思わず声を上げた。かつて威厳に満ちていた父の姿はそこになく、衣服はくたびれ、髪も乱れていた。

「クラリス、元気か?」

その言葉にも、かつての堂々とした調子はなく、どこかすがるようだった。

「どうしたの?お母様に……離婚の話、されたんでしょ?」

私が問いかけると、父はぎくりとした表情を浮かべた。――知らないとでも思っていたのだろうか。

「まさか、お母様に追い出されそうになっているの?」

私が問いかけると、父はわずかにうつむいた。

父の姿が、どこか哀れで、情けなく見えた。

だけど私の胸の奥には、かつて感じたことのない複雑な感情が湧いていた
< 281 / 300 >

この作品をシェア

pagetop