家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
するとセドリックが、部屋に顔を出した。

「セドリック、何も屋敷を買えとは言っていないのよ。」

私が慌てて言うと、セドリックは穏やかな表情で答えた。

「売るつもりだったのでしょう? 他の者にわたるより、君の想い出が詰まった屋敷を僕が守る方がいいじゃないですか。」

その言葉に、両親は複雑な顔をした。

どちらも屈辱の表情を隠せない。

「という訳で、お父様とお母様には、引き続き屋敷に住んで頂きます。」

「うむ……」父が渋い声を出す。

だがセドリックは、さらりと続けた。

「グレイバーン家の離れにね。」

その一言に、父はぎくりと顔を強張らせた。

本邸ではない――。その意味を、彼はきっと理解したはずだ。

思い通りにいかない現実に、父はさぞ困っただろう。

けれどそれが、今までの行いに対する“落とし前”でもあった。
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