家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「これじゃあ、愛人を作られてカザリス伯爵家を乗っ取られるわ!」

ルシアは目を見開いて、まるで誰かに追い詰められているかのように叫んだ。

「まだ愛人ができると決まったわけじゃないでしょ?」

私がなだめようとすると、彼女はすぐさま首を横に振る。

「いえ!絶対作るわよ!あいつは!」

もはや“旦那様”ではなく、“あいつ”呼ばわり。

私は胸が詰まる想いだった。結婚しても、必ずしも幸せになれるわけではないのね。

「一度、レオンときちんと話し合ったら?すれ違っているのなら……」

「何度も話し合おうとしているわよ。でも、あの人は逃げるの。私と向き合おうとしないのよ!」

そう言って、ルシアはぎゅっと唇をかみしめた。

彼女の傲慢さの裏に、必死で愛を求める弱さが垣間見えた瞬間だった。
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