家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「離婚よ、離婚!」

ルシアは涙を浮かべながら叫んだ。

「まだ結婚して一年も経ってないじゃない」

私がそう言うと、彼女は床を踏み鳴らすようにして怒りを爆発させた。

「もうたくさんなの!あんな男、私のことなんて何とも思ってないのよ!」

荒れ狂う彼女の様子に、私は心のどこかで納得していた。

この激しい気性は、やはり母譲りなのだろう。自分の思うようにいかないと我慢できない。けれど――

「妻の私を大切にしようとしないなんて!なんでこうも違うのよ、クラリス!あんたの夫は――」

その時だった。

「……その口ぶり、少し聞き捨てならないな。」

静かに、けれど確かに響く声。

振り返ると、そこにはセドリックが立っていた。

ルシアの肩がビクリと震える。まるで子供が叱られる直前のように。

「グレイバーン……侯爵。」

彼のその一言が、ルシアの怒りを一気に冷ました。
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