家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「お兄様!」

先ほどまで涙を浮かべていたルシアの表情が一変し、まるで少女のような笑顔でセドリックを見上げる。

あの不機嫌さはどこへやら、瞳を輝かせて――。

「お兄様。かわいい妹のお願いをきいて?」

「却下。」

「ええ!まだ言ってないわよ!」

セドリックの即答に、私は思わず吹き出しそうになる。

彼は本当に、ルシアの扱いに慣れている。

「この前、エルバリー家の屋敷を買い取って両親の生活を安定させたでしょう?クラリスの為に。」

「だから?」

セドリックの声は冷たくも毅然としている。

まるで「それが君と何の関係がある?」とでも言いたげな態度だ。

ルシアはうっ、と言葉を詰まらせた。

「つまり……私のことも、ちょっと助けてくれたって……」

「クラリスと君を一緒にするな。」

セドリックのきっぱりとした言葉に、ルシアの口が小さく「むぐ……」と閉じられる。

どうやら彼女の甘え作戦は通じなかったようだ。
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