家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「ちょっとでいいのよ。私、レオンと別居したいから、この屋敷に来てもいいかなぁ。なんて。」

ルシアは舌を出して、甘えるようにセドリックの袖を引いた。いつもの小悪魔的な仕草だ。

「やはり家族だな。」

「えっ?」ルシアはぽかんとした顔でセドリックを見上げる。

「ね。」

私はセドリックの表情を見て、すぐに察した。

――やっぱり、分かってた。

あの両親と一緒。甘えればなんとかなると思っているのだ。

「分かった。」

「セドリック?」

思わず声が出た。

嘘でしょう?本気なの?ルシアをこの屋敷に?

「ええっ⁉」と私が続けようとするのを、セドリックは軽く手で制した。

「……離れに空きがあったな。しばらくそこを使えばいい。ただし、条件がある。」

「じょ、条件……?」

ルシアがごくりと喉を鳴らす。
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