家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
月が満ち、いよいよ私は出産に臨むこととなった。

お腹の子が元気に動くたび、不安と期待が胸を交錯させる。

「大丈夫、大丈夫よ。」

セドリックのお母様が、優しく私のお腹を撫でてくれる。

「……無事、産まれますかね。」

私はつい、本音を漏らしてしまった。

痛みも怖いけれど、何よりこの小さな命が無事に生まれてきてくれるか、それだけが心配だった。

するとお母様は穏やかな笑顔で言った。

「クラリス、この世に生まれなかった命なんてある?」

私はその言葉に、ふっと肩の力が抜けるのを感じた。

「命はね、自然に生まれてくるようにできているの。あなたの体も、赤ちゃんも、ちゃんと準備してるわ。」

目に涙が浮かぶ。私は静かに、お母様の手を握った。

「ありがとうございます。……頑張ります。」

お母様の温もりが、私に力をくれる。

どこか神聖な気持ちで、私はこの奇跡の瞬間に向かって歩み始めていた。
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