家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
すると助産婦さんが、「おめでとうございます」と優しく声をかけ、産湯に浸かったばかりの赤ちゃんをそっとタオルで包んで私の胸元に差し出してくれた。

「……ああ……」

私はその小さな体を抱きしめた。

あたたかくて、柔らかくて、信じられないくらい愛おしい。

「男の子です。」

傍にいたマリーナが、涙をぬぐいながら微笑んで教えてくれた。

男の子。——ああ、男の子だったんだ。

この子は私の息子。

セドリックと私の愛の結晶。

すると部屋の扉がそっと開いて、セドリックが入ってきた。

私の隣にしゃがみ込み、小さな命をのぞき込むと、ふるえる手で赤ちゃんをそっと腕に抱いた。

「ありがとう、クラリス……」

その瞳には光るものが浮かび、静かに一筋、頬を伝って落ちていった。

セドリックが泣いている。私も、マリーナも、皆が泣いていた。
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