家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
私が声をかけると、彼は顔を上げ、やわらかく微笑んだ。

「おはよう、クラリス。綺麗だ。」

その一言に、胸がきゅっと締めつけられる。

彼は私よりもずっと早く目を覚ましていたはずなのに、そっと私を寝かせておいてくれた。

そう思うと、彼の優しさが心に沁みた。

ほどなくして、朝食が私たちの前に運ばれてくる。

銀の蓋が取られると、意外にも食卓は思ったより質素だった。

パン、チーズ、ハーブ入りの卵料理に、温かい紅茶。

「よく眠れた?」

彼の問いに、私は小さく頷いた。

「ええ。……不思議と、あなたの隣なら、安心して眠れました。」

そう伝えると、セドリックは何も言わず、またあの穏やかな笑みを浮かべた。

朝の陽射しが差し込む中で、静かな幸福が胸の中にゆっくり広がっていった。
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