家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「僕はあまり朝食を食べないんだ。君は好きなだけ食べていいんだよ。」

セドリックは、そう言ってカップを口に運んだ。

その口調は軽やかで、けれど気遣いに満ちていた。

「私も……朝食はあまり食べないんです。」

本当はもう少し食べられたかもしれないけれど、夫に合わせるのが妻の務めだと思った。

そうやって、自然と彼に寄り添えるようになりたい――そんな気持ちが芽生えていた。

「僕はこれから仕事に行ってくる。……新婚だからね、今日は早めに帰るとするよ。」

彼が何気なく言ったその一言が、心の奥にじんわりと染みた。

「はい。」

私のために、早く帰ってきてくれる。

ただそれだけのことなのに、こんなにも嬉しくなるなんて。

セドリックは椅子を引き、ゆっくりと立ち上がる。
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