家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
その動作一つに品があり、彼がどれだけ努力してここまで来たのかを思わせた。

「では、お先に失礼するよ。」

玄関へ向かおうとする背中に、私は慌てて声をかける。

「あっ……行ってらっしゃいませ。」

彼が少しだけ振り返り、にこりと笑った。

――その笑顔が、朝の光よりもまぶしく感じられた。

そして、セドリックが出ていったのと入れ替わるように、お母様がやってきた。

優雅な歩みでダイニングに入ると、にっこりと微笑みながら声をかけてくれる。

「おはようございます、お母様。」

「おはよう、クラリス。」

その言葉に、私は胸が温かくなった。

――クラリス、と名で呼んでくれること。

それは私のことを、本当に家族の一員として迎え入れてくれている証だった。
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