家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「むしろ……私の方が戸惑いました。」

そう答えると、お母様は意外そうに目を丸くする。

「まあ。あなたも男性経験、なかったの?」

その言葉に、私は思わず笑ってしまった。

「はい。初めてでした。」

するとお母様は、ふっと遠くを見るような目をしたあと、ぽつりと語り始めた。

「私はね……お父様と結婚する前に、結婚を約束していた人がいてね。その人と、若い頃……愛し合っていたの。」

私は一瞬、言葉を失った。
ということは……お母様は結婚する時、処女ではなかったということ?

「でも、お父様にどうしても“伯爵夫人になってほしい”って言われてね。あの人、ちょうど爵位を受けたばかりだったのよ。貴族の妻になるのも、悪くないって思ったの。」

それは淡々としていながら、どこか切なさの混じった語り口だった。
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