家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「でもね、クラリス。貴族社会は――本当に恐ろしいものよ。」

お母様は声のトーンを落とし、紅茶のカップをそっと置いた。

「作法ひとつ知らないだけで、とことん蔑まれるの。私もね、まだ成り上がったばかりだったから、許された部分もあった。でも……心の中で笑っている人は、きっと大勢いたわ。」

私は何も言えなかった。

お母様がその言葉をどれほどの重みで口にしているか、痛いほど伝わってきたからだ。

――苦労されたのだ。きっと、誰にも言えないような。

「だから、キャリーには悪いけれど……セドリックが貴族の娘を妻に迎えられて、本当によかったと思っているの。あなたなら、蔑まれることもないもの。」

お母様は優しく微笑んだ。

でも、私の胸に刺さるものはあった。

「でも……私には、そばかすがあります。」

思わず、ぽつりと口から出ていた。

何の価値もない、そんな言葉。

だが、お母様はその言葉に、ふっと小さく笑って言った。

「クラリス、それがあなただけの魅力よ。」

私の中にあった、少しの痛みが溶けていくようだった。
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