家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
廊下ですれ違えば丁寧にお辞儀をし、掃除は隅々まで行き届いている。

何より、時おり厨房や中庭から聞こえる笑い声に、私は安心する。

彼女たちは、仕事を楽しんでいるのだ。

――それは、伯爵家の気風そのものなのかもしれない。

この家で、私にできることを探そう。そんな風に、自然と思えた。

「お母様は、普段は何をされているの?」

ふとした疑問から、私はマリーナに尋ねた。

すると、彼女は珍しく口ごもった。

「ああ、ええっと……」

その戸惑いに、私は眉をひそめた。

「どうしたの? もしかして……お母様、浮気でもしているのかしら?」

思わず冗談めかして言ってしまったが、マリーナの真剣な表情に冗談では済まない気配を感じた。

「い、いえっ、そんなことは! ただ……本当は伯爵夫人には言うなとおっしゃっていたのですが……」
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