家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
彼女はそっと声を落としながら、打ち明けてくれた。

「お母様は、毎朝、図書室へ行かれております。そこで、グレイバーン家の仕事について、勉強をされているのです。」

「えっ……勉強?」

「はい。税の取りまとめや、街道整備の資料、交易都市の記録などを。とても熱心に……。」

私は驚いた。

あの優しく上品なお母様が、陰で家のために尽力されていたなんて。

――だからこそ、あれほど温かくて、威厳のある夫人なのだと、胸の奥がじんとした。

私は静かに図書室の扉を開けた。

お母様が中にいないことは、マリーナが事前に確認してくれている。

だが、それでも少しだけ緊張していた。

重厚な木の扉の向こうには、想像をはるかに超える数の書物が並んでいた。







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