家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
午後の陽射しの中、私はゆっくりと庭を散歩していた。

「広い敷地ね。」

何気なく呟くと、後ろからマリーナが答えてくれる。

「お屋敷が小さいので、そう思われるのです。」

彼女の遠慮のない物言いに、少しだけ親近感を覚える。

「花が多いわね。」

「ええ。伯爵夫人――前の伯爵夫人のお好みです。」

マリーナは私についてくるのに必死なようで、私はわざと歩くスピードを緩めた。

そんな時だった。

「やあ、新しい夫人かぁ。」

陽に焼けた顔の中年男性が、手にした剪定ばさみを持ったまま笑いかけてきた。

「クラリスです。宜しく。」

「ロルフ・ヘンダーソンだ。庭師をしている。ロルフと呼んでくれ。」

「分かったわ、ロルフ。」

気さくな笑顔と、手入れの行き届いた庭が、彼の誠実な人柄を物語っていた。

ここでの生活にも、少しずつ馴染める気がしてきた。
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