家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
それから数日かけて、私はセドリックに、侍女から聞いた話を少しずつ尋ねてみた。

「お母様、毎日歴史書や地図を見てお勉強なさっていたのね。」

そう切り出すと、セドリックは少し眉をひそめた。

「ああ、そのことか。」

なぜか、少し呆れたような口調だった。

「母はね、父のことになると、他が見えなくなるんだ。子どものころからずっとさ。小さい頃なんて、図書室にこもりきりで、僕や姉と遊ぶことなんて滅多になかったよ。」

少し寂しそうに笑った彼の表情に、胸が締めつけられる気がした。

あの温かくて優しいお母様にも、別の顔があったのだ。

「でも、お母様なりに一生懸命だったのね。」

「そうだな。……父に愛されようと必死だったのかもしれない。」

セドリックの言葉が、妙に胸に残った。

この家に嫁いで初めて知る、グレイバーン家の家族の姿。
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