家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
そして、ダンスの曲調が優雅に変わった。会場の灯りが柔らかくなり、周囲の空気もどこかしっとりとしたものに包まれる。

「一曲踊りませんか? グレイバーン夫人。」

ノアが手を差し伸べてきた。「ええ、喜んで。」私は微笑みながら手を取った。

エミリアも、隣でヴィンセントと踊り始めている。しあわせそうな二人の姿に、自然と私の頬もほころぶ。

「ダンス、お上手ですね。」

「これでも、一応は貴族令嬢ですから。」軽口を交わしながら、足取りは軽く、リズムに合わせて舞う。

「セドリックとは、どこでお知り合いに?」

「親が決めた政略結婚です。」私は飾らずに答えた。

するとノアは少し驚いたように眉を上げた。「てっきり恋愛結婚かと。そんな雰囲気に見えました。」

私はほんの少しだけ微笑んでうつむいた。「それでも、今は――幸せです。」
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