扇情的ナミダ
すっきりしない思考を誤魔化すためじゃない。
自分の気持ち、心が問う。
知りたいと願って。
「優しい所。その樋野くんの優しさが、皆に等しく同じで……そこに居ないかのような儚さに見えて、目が離せなくなったの。」
心に刺さる言葉。
「俺が本当は優しくないって事?」
「違うわ。上手く言えないけれど、本当のあなたは可愛いね。」
可愛い?
初めて言われた。それは褒め言葉?
どう反応していいのか分からない。
そんな俺に、また彼女は笑う。
「自分の気持ちが揺れて、迷って良かった。遠目に見て感じたあなたに幻想を抱いただけなのかと思ったわ。」
嫌われていないのは分かる。
それなら。
「思い出すから、留惟……いじめても良い?泣かせてみたいんだ、君を。」