扇情的ナミダ
心臓が跳ねるように高鳴り、体が熱を発するように感じる。
満足したわけじゃない。
これは。
「留惟、君の気持ちが変わらないなら。ねぇ。俺の事、暁(あかつき)って呼んでよ。」
見下ろした俺に、留惟は瞬きを何度か繰り返して無言。
「今すぐ呼んで。俺の事が好きなら。君は気持ちが変わらないと、さっき言ったばかりだよ。」
顔を近づけて額を合わせ、両手で頬を包む。
目は逸らすことなく、彼女の呼ぶ声を待った。
口が動くのが分かって、俺は目を閉じる。
「暁……くん。」
とても小さな声。
俺は目を開け、顔を離して彼女の表情を確認した。
真っ赤に染まった表情は今までと異なり、何とも言えない気持ちにさせる。
少しの違いで、俺の心を揺さぶって。