扇情的ナミダ
手放したくない。もっと見たい。
彼女の深い部分にまで触れても、俺を許すように受け入れて欲しい。
罪悪感や恐れなどない関係を。
それは。
「俺は何度か君が泣いた姿を見ていると言ったよね。それでも自分の心が反応したのは、君が俺に告白した今日だけだ。」
今まで思い出せない程、些細な事だったなら。
特別なのは告白。
やっと思い出した一度の出来事。
雨の日、遠くから俺を見つめる女生徒の姿。
バス停から少し離れた木の下で、傘も差さずに、びしょ濡れで立っていた。
笑顔だったから、顔を流れているのは全て雨だと思っていたけれど。
嬉し涙。それは何故?
「君は誰?」
名前は知っている。
だけど記憶に残っているのは、その一度だけなんだ。