扇情的ナミダ
「やっぱり忘れちゃったのね。約束したのに。」
約束?俺が?
もっと昔なのか。
まさか。
「リュー?」
俺の呼びかけに、懐かしいような涙を浮かべた笑顔を返す。
俺の初恋の女の子。
唯一、心許した存在。
「そうだよ、思い出してくれたんだね。」
俺の首に抱き着き、何度も『嬉しい』と呟く。
彼女の表情は見えないまま。
ただ涙は。
俺の手に、次々と零れ落ちてくる。
幼い頃、名前を聞いた。
君はルイとはっきり発音できず、リュイと言うのが精いっぱい。
俺はリューと呼んでいたんだ。
引っ越しの、あの日まで。
もう会えることもないと、悲しみを忘れようと記憶から消して。
別れ際、幼い君の告白シーン。
それは今と変わらない。
涙を浮かべて想いを告げる…………