扇情的ナミダ

小さな声で目線も合わせず、変な言葉遣い。
加減ができなくなりそうだ。

「なら、触れても良いよね?」

俺は口元が緩んで、彼女の髪を流しながら耳に触れ、反応を楽しむ。
彼女は必死で我慢しようと手で口を押え、少し逃げ腰。

それでも、怯えているわけじゃない。
俺に触れられるのが嫌でもない感じ。受け入れられた気がする。

耳裏に中指を添えて、親指で撫でながら顔を近づけていく。
彼女は目をギュッと閉じ、覚悟を決めたように俺を待つ。

その様子が愛しくて、ずっと観察を続けた。
少しの時間で、どんどん表情が変化していくのを。

俺の気配に敏感なのか、すぐに緊張が伝わった。
そして、観察する俺の動きがない事に疑問を持ったのか眉間にシワ。


< 21 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop