扇情的ナミダ
迷いと攻防
笑いが込み上げ、口もとが緩みそうになるのを何度も我慢する。
それが痛みに苦しんでいる様に見えたのか、彼女は俺に付き添って保健室へと誘導してくれる。
いや、しているのは俺の方か。
放課後、先生は直帰で居ない。
この前、部活動をしている生徒が言っていたのを思い出す。
部活動終了の間際、見回りが戸締りするのだと。
そんな危険な情報を知っているのは、どれだけいるだろうか。
保健室に辿り着き、中に誰もいない事を知って高鳴る胸。
俺の考えなんて知らずに心配する彼女の表情に萌える。
二人で入り口を通り、留惟がドアを閉めて、俺が鍵をした。
「え?」
間の抜けたような視線を、俺に向ける。
「ん?」
俺は最高の笑顔を向けたつもりだけど。