嫁いだ以上妻の役目は果たしますが、愛さなくて結構です!~なのに鉄壁外科医は溺愛を容赦しない~
「それは、前の私を好きではなかったということですか?」
「君を好き嫌いで見ていない。そもそも、好意を抱くほど会ってもいない」

 その口振りで察する。

 紘生は美七に恋愛感情はなく、結婚は政略的なものと割り切っているのだろう。

 そういえば母は『婚約者』とは言っていたが、『恋人関係』にあるとはひと言も口にしていない。

 おそらくふたりは、あくまで口約束の婚約をしているだけ。

 特別な感情を持っていないなら、まだ交渉の余地はある。

「それならなおさらこの結婚は──」
「すまないが、破棄するつもりはない」

 きっぱりと言い切られ、美七は眉根を寄せた。

「どうして? 思い入れがないなら無理に結婚しなくてもいいじゃない」
「俺にとって大事なのは、気持ちよりも効率だ」
「効率?」

 首を傾げると、紘生が美七をソファに座るように促した。
 素直に腰を下ろした美七の隣に紘生も腰かける。

 少し離れた場所で両親たちがこちらを温かな目で見守っていて少々居心地が悪いが、今は気にしないよう視線を逸らした。

「俺は人生において恋愛に重きを置いていない。理由は、恋愛に現を抜かすくらいなら、学びや仕事に時間を費やしたいからだ。だから婚約の話が持ち上がった時、恋愛をせずに済むなら効率がいいと承諾した」

 なるほど、と美七は納得する。

 紘生は政略結婚向きの性格、思考らしい。
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