嫁いだ以上妻の役目は果たしますが、愛さなくて結構です!~なのに鉄壁外科医は溺愛を容赦しない~
 前世ではそうやって割り切る令息、令嬢は多かった。

 だが、あくまで前世の話。
 時代も場所も違う今世では、自分の意思で結婚相手を決めるべきだ。

 よみがえった記憶を胸に、美七はそう考えている。

「それは確かに効率もいいし、都合もいいでしょうね」

 自分の都合だけ考えて、美七の気持ちは考慮していない。
 そんな身勝手な男に見えて、つい攻撃的になってしまう。

 だが紘生は嫌な顔はせず微笑した。

「その物言い、本当に以前の君からは想像もつかないな」

 眦を下げたその表情は存外柔らかく、不覚にも胸が高鳴る。

(あの人は、そんなふうに笑わなかった)

 オーフェンはいつだって作り物のような完璧な笑みを浮かべていた。

 似ているけれど違う。
 そのことがほんの少しだけ、美七の警戒心を解く。

「言っておくが、君は了承済みだ」
「気持ちより効率重視の結婚を、ですか?」
「ああ。親や俺が望むならそれでいいと」

 それは確かに今の自分とは違う。
 だが、前世の自分とは若干似ている。

(まあ、王太子相手じゃ大して選択肢はなかったけど)

 とはいえ、ここはもう転生先。
 新しい人生を謳歌するため遠慮などしてはいられない……のだが、自分勝手に振る舞って家族に迷惑をかけたくはない。

 入院中、甲斐甲斐しく世話をしてくれた母、記憶喪失になっても温かく見守ってくれる父。
 そして、ぶっきらぼうだけれど、なんだかんだとサポートしてくれる弟。

 優しい彼らを裏切りたくない。
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