嫁いだ以上妻の役目は果たしますが、愛さなくて結構です!~なのに鉄壁外科医は溺愛を容赦しない~
(そういえば、そのあたりもオーフェンとは違う)

 だとしたら、やはり王太子とはなんの関係もないのかもしれない。
 もし紘生がオーフェンの生まれ変わりなら、記憶がなくても二股三股は当たり前にしていそうだ。

(なんて、いくら考えても確かめようがないんだけど)

 結婚すると決めたのだ。
 ウダウダ考えても仕方ない。

 それよりも、結婚するなら美七にはやらねばならないことがある。

 前世で妃教育をみっちり受けてきた美七でも、習得できていないもの。

 それは──『家事』だ。

 公爵令嬢だった美七には、炊事、洗濯などの経験がまったくと言っていいほどない。
 それらは使用人の仕事だったからだ。

 とはいえ、ミレーナとしては経験がないが美七にはあるようで、やろうとするとなんとなくわかり身体が動く。
 だからそこは問題ない。

 困っているのは料理。
 正確にはレパートリーだ。

 先日弟に『久しぶりに姉さんが作るハンバーグが食べたい』と言われたのだが、材料も手順もさっぱり思い出せなかった。

 このままでは、結婚しても妻の役目を果たせない。
 それは、元王太子の婚約者だったミレーナのプライドが許さない。

「新しい人生を謳歌するなら、家事もしっかりものにしないと」

 いずれ離婚するとしても、妻でいる間は己の役目を果たしてみせる。

「そうと決まれば花嫁修業よ」

 結婚式までに家事をマスターしてみせる。

 心を燃やす美七は、ベッドから降りるとやる気に満ちた顔で母のいるキッチンへ向かった。

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