嫁いだ以上妻の役目は果たしますが、愛さなくて結構です!~なのに鉄壁外科医は溺愛を容赦しない~
桜が咲き誇る四月上旬。
快晴の空の下、参列者の視線を一身に受ける美七は、ベール越しに白いタキシードを纏う紘生を見つめていた。
(本当、何度見てもそっくり)
特に、こういった正装の彼は、裏切り者の王太子を嫌でも想起させる。
(でもきっと、あの人とは違う)
美七の細い薬指に、ダイヤが輝くマリッジリングが通される。
(大丈夫。私はもう裏切られて死んだりしない)
自身に言い聞かせながら、美七もまた紘生の薬指にシンプルなデザインのマリッジリングを飾った。
「では、誓いのキスを」
神父の声がして、美七は視線を落とし軽く膝を折った。
伸びてきた紘生の手がそっとベールを上げる。
そうして姿勢ごと目線も前に戻したその刹那、美七はヒュッと息をのんだ。
一瞬、紘生がオーフェンに見えたのだ。
血の気が引き、動揺に瞳が忙しなく揺れる。
しかしひとつ瞬くとオーフェンは消え、代わりに怪訝そうにこちらを見つめる紘生がいた。